Dessimis Pinot Grigio 2015 Vie di Romans
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デッシミス・ピノ・グリージョ 2015 ヴィエ・ディ・ロマンス
《イタリア/フリウリ/白/ピノ・グリージョ/辛口》
フリウリ州‥スロヴェニアとの国境沿いの街、ゴリツィアの西に位置するマリアーノ・デル・フリウリ地区はイソンツォDOCエリアとなります。祖父の代から100年もの間、ガッロファミリーの手によって守られたその土地は、水はけのよい平らな土地で、海と山の両方から吹く風に恵まれるミクロクリマを持つテロワール。
17歳で家業を継いだ現オーナーのジャンフランコ・ガッロ氏は、同地区のみならずイタリアの生産者が一目置き、イタリア最高の白ワインの生産者として最も尊敬され信頼される‥「北の巨人」と形容される人物です。ジャンフランコが三代目‥次は息子さんが四代目となるそうです。
創立以来「ガッロ」と名乗っていたものの、カリフォルニアの大規模なワイン生産者である「(EJ)ガッロ」との商標権の兼ね合いで1986年に名称の変更を余儀なくされたそうで、現在の「ローマ人の道」という意味のヴィエ・ディ・ロマンスになったそうです。
彼の考えるテロワールとは「人間、土地、気候、ブドウ品種」であり、その中でも最も重要なのは「人間」であるとのこと。また「テロワールに最も適したブドウを栽培すること」「凝縮したブドウを作ること」「完熟期を迎えたブドウを最高のタイミングで収穫すること」な、当たり前のことを当たり前に‥に向かって邁進する生産者。
流行の醸造法や、市場に流されることなく、彼がその地で得た知識、経験を元に毎年生み出されるワイン達。何度かご一緒させて頂きましたが、本当に偉大さを感じる人物ですね。そこには包容力もあるわけですが、自身の目標や探求へのストイックさをヒシヒシと感じます。とても几帳面でブレない‥見習いたいものですね。
2009年からの樽発酵やマロラクティック発酵の廃止、リースリングレナーノ単一のプリン・フリートや、メルロからなるロゼのチャントンスの生産終了もあり、転換期にあると言え、それまでのスタイルとの差異は少なからず感じて当然ですが、思想としては進化をたどっているはずなんですよね。
イソンツォDOCエリアは北緯45度から46度、日本でいうと最北端である稚内あたりとなります。この地区は平地で海抜も30m前後ながら「北」であることや、大陸性気候と地中海性気候の両方を併せ持つこの地区だからこその要因も多数でそのひとつにロシアから吹き付ける冷たく乾いた風"ボーラ"が平地ながら滞留を興さずに冷涼な気候を保っています。
イソンツォ川の南部は粘土質や石灰質が多い土壌で、畑での仕事量は半端ない。グリーンハーヴェストは二度行い、一本の樹から収穫されるブドウは600g、一本のワインを造るに1000gのブドウが必要と言われているので、そのためには二本の樹から収穫したブドウを使うことになりますね。
また徹底的に酸化を防ぐ醸造も彼ならでは。除梗の段階から極力酸化を防ぎ、発酵が始まるまではドライアイスの粒を混ぜることで酸素を寄せ付けません。またタンクには窒素を充填することで酸化を防ぐ徹底ぶる。酸化を防ぎきった果汁は、ブドウの粒の中味と同じ色、香り、味を持つそうです。
2015年のビンテージ情報
4月、5月は雨が少なく気温が高く素晴らしい春でした。6月、7月に適度に雨
が降るも長雨にならず、水不足の心配もない非常に素晴らしい状態で初夏を
迎えました。7月末から気温が上がり始め40度に近い日も何日かありましたが、
初夏から収穫までの間は昼夜の寒暖差がかなりあり気温が上がった日でも夜
は涼しく、ブドウの生育には完全にマッチし、パーフェクトな年になったと
言えるでしょう。収穫は9月上旬から始まり、雨に当たることなく完璧な状態
で行われました。ジャンフランコ氏がオヌヌメするのはソーヴィニョン、シ
ャルドネ、ピノ・グリージョの3種。また、他品種は香りに品種の個性が良く
出ており早い段階から楽しめますが、熟成ポテンシャル高いとのこと。2015
年は記念すべき素晴らしいビンテージで自信に溢れる年になりました。
ヴィエ・ディ・ロマンスの熟成樽に関しての追加情報
西野嘉高もテクニカル情報を書きながら気になっていたのが熟成樽の容量の
情報なんですね。225Lと228L‥その3Lの違いに何があるのか?輸入元さんか
ら回答が来ましたので追加情報として記載しておきます。
樽の製造メーカーによってブルゴーニュタイプである228L容量の樽と、ボル
ドータイプである225Lの樽のが異なるそうです。元々ヴィエ・ディ・ロマン
スではブルゴーニュタイプの228Lの樽を使用したいたそうですが、樽メーカ
ー(ダルジュ、バロン)がブルゴーニュタイプ(228L)の樽の製造を止めて
しまい、以降はその樽メーカーからボルドータイプ(225L)の樽を購入する
ことになったので、熟成に使用する樽の容量が複数あるようです。
なお、現在ヴィエ・ディ・ロマンスのワインの熟成に使用されている樽のメ
ーカーとタイプは下記の通り。なお、3Lの差はワインに及ぼす影響はないと
のことです。
・タランソ :ブルゴーニュタイプ
・セゲンモロー:ブルゴーニュタイプ
・ダルジュ :ボルドータイプ
・バロン :ボルドータイプ
「デッシミス」とは"農家の年貢"という意味だそうです‥。いまどき「年貢」なんて単語を聞くのも稀ですが、その昔‥農家は「出来のいい」農作物を奉納しなければならなかった…。つまり「年貢」となるのは「出来のいい作物」なんですね。よってヴィエ・ディ・ロマンスの出来のいいワインとして「デッシミス」という名前となったようです(たぶん)。
デッシミス畑はヴィエ・ディ・ロマンスが所有する畑の中でも比較的広い7.50haの畑と2014年は記載していましたが2015年の情報では9.05haに面積が増えています。植樹は1985年、1999年、2002年。平均樹齢は21年と2014年は記載していますが樽ドネ同様に栽培面積の増加とともに平均樹齢は若くなり18年となっております。こちらも植え替え他の要因で若い樹からのブドウも混醸できるようになったのかもしれませんね。海抜は34m。砂利や小石を含み、鉄分由来の赤みがかった粘土質の土壌。
2015年ビンテージは9月の1日、2日、10日、12日の4日間。手摘みで収穫されたピノ・グリージョは、約8度でのコールドマセラシオンの後、16度から19度に温度管理されたステンレスタンクでの発酵(2/3)とバリックでの発酵(1/3)の併用では16日間。マロラクティック発酵は施されず、澱と接触させたままバリック(50%が225L、50%が228L)で約9ヶ月の樽熟成後瓶詰め。2016年の7月25日、26日、27日に瓶詰めされ、約10ヶ月の瓶熟成を経ます。
アルコール度数は2009年が15.56度、2010年が14.21度、2011年が15.00度、2012年は15.23度、2013年は14.66度、2014年は13.20度、この2015年は13.8度となります。
数年間まではもっと赤味がかった色を持つピノ・グリージョでしたが、この数年は淡さを感じる薄いピンク色。スキンコンタクトによる色の抽出と思われがちですが、決してそうして色が付いているわけではないそうです。ピノ・ノワールの亜種のひとつであるピノ・グリージョが完熟すると、ブドウ果皮の色がしっかりと果汁に伝わり、スキンコンタクトをせずとも果汁に色が付くそうです。また、搾りたてのモストから酸化が進めば透明に近づくそうですが、ヴィエ・ディ・ロマンスでは酸化を嫌う為に搾りたて同様のピンク色が保たれるそうです。
独断と偏見に満ち溢れた極主観的毒味
お馴染みのラベルデザイン。コルクはディアム社製の場合もあるかと思いますが、西野嘉高の開けたボトルは良質の生コルクの5cmです。生コルクに関しても複数のコルクメーカーを試しているようで、樽ドネとは違うコルクメーカーの刻印があります。なお表記のアルコール度数は13.5度ですがスペック的には13.8度あり、2014年よりも0.6度ほど高くなっています。まずは冷蔵庫キンキン温度からのスタート、グラスはヴィノムのブルゴーニュ型です。
2013年ほどオレンジが濃いわけではないが、2014年のほぼ黄色で赤味の射さない色とは違い、しっかりと赤味、オレンジ色でデッシミスらしいですね。その色合いも含めでヴィエ・ディ・ロマンスのワイン達の中でもビンテージ毎による状態の違いの開きが大きい銘柄です。グラスからの香りは、樽発酵が復活してからのあの樽香が溶け込んだ皮の色の濃い柑橘果汁、白い果肉ではなく、やはり夕張メロン系の果肉の果汁の香りで、マンゴー系にも通じます。皮の色が濃いとはいえ、柑橘らしい高音域もカバーする風味と、メロンのように低温域の香りがあり香りのレンジも広いんですね。こちらもまだ低い温度ですが、温度が上がるのが楽しみな酒質です。
口に含みますと、冷ややかなミネラルを含んだ液体のボリュームは大きい。口の中を満たしますね。十分な重さを感じます。味わいにある柑橘は、スプリッツ、ブラッドオレンジジュースのソーダ割‥。まだ柑橘やメロンの味わいよりもミネラルが前ながら、そのミネラルがなめらか、かつ、重い。まだ一杯目ですが酸味とともに適度な旨味があり、まだそれほど苦味はない。どこか、ヴィニフィカート・イン・ビアンコ的な金属的ミネラルと、酸味に近い渋味も感じ樽ドネ同様に余韻が長いですね。
ゆっくり飲んでます。やはり(一部)樽発酵、樽熟成させたヴィエ・ディ・ロマンスはちょいと温度が上がってきた頃からがいいですね。でも、それを感じるにはキンキン温度も確認しておかないと‥とも言えますけれども。
デッシミスのいいところは、果実の色の幅の広さですかね。黄色からオレンジまで、果肉や皮の色の幅の広いフルーツの風味と果汁があり、そこに複雑さを感じます。
いいまとまりがありますね。すでに完成されている‥いいバランスがあります。
二杯目は温度が常温に近くなってきました。少し色合いは赤味がオレンジに変化してきたでしょうか。白ワインは色の変化が顕著な場合がありますね。香りには夕張メロン、マンゴーのピューレ、樽ドネ同様のカスタードが軽やかながらリッチな風味を醸し出しています。ここらへんは樽による部分かもしれませんね。
果実味も十分な密度がありますが、重過ぎないのは、ブラッドオレンジ、ピンクグレープフルーツの香味と酸味が利いていますね。
うん、やはり色の濃い目の柑橘の風味から、薄めの柑橘‥メロン系の果実などフルーツの風味、グラデーションがありますね。そう、複雑さです。
うん、厚み、ボディ感は十分ですね。まったくヌケもない。だからと言って過熟感があるわけでもない。実は、品種特性に非常に真面目なビンテージかな。たぶん、そう苦労もしてないはずで、素直に醸造した結果なのかもしれない。
樽ドネと同時に毒味をしていますが、デッシミスは独特の個性、やはり感じますね。それが旨さですし、印象にも残ります。2013年ほどのインパクトのある色や、味わいではありませんが、十分にアベレージを超えると感じ、高い次元でのバランスが2015年にはありますね。
二日目は冷蔵庫から出して約40分ほど経過したタイミング。グラスはヴィノムのブルゴーニュ型です。色は初日一杯目よりは赤味、オレンジ色やや控えめですが、ちゃんと茶色や赤が射しますね。夕張メロン、ネーブル、ブラッドオレンジ、ピンクグレープフルーツ、果汁の色もしっかりですが、キチンと酸味も感じる香りが複雑です。シャルドネ同様に、2015年はそれほど樽香らしき樽香は感じませんけどね。
口に含みますととてもなめらかな輪郭、そして密度高く、重い、深い‥少し塩気のあるミネラル‥旨味が強いですね。樽ドネ同様に、どこかクリーミーに感じさせる部分は樽か?温度が上がってくるとなお良い。デッシミスも旨味と酸味がヴィエ・ディ・ロマンス。樽ドネだってそう甘くはないが、デッシミスはさらに甘くはない。もちろん甘味はあるけども。ブラッド・オレンジやピンク・グレープフルーツ的な酸味の利き方、苦味は連想程度で、控えめ。
二杯目、さらに温度を上げてます。樽ドネよりもミネラル感はやや強め、やはり皮、果汁に赤味ある柑橘、果肉のフルーツの風味が個性的で、少し渋味があるのもデッシミスかな。でも苦味はそうでもない。樽ドネほどの重さではないが、十分な密度があり余韻も長い。
三日目も冷蔵庫から出して30分程‥まだ温度は低めですので最後の一杯はグラスの中でゆっくりと温度を上げて行きましょうかね。もちろん、グラスはヴィノムのブルゴーニュ型ですが、ボルドー型でもいいかもしれません(飲めばわかる)。
色合いは二日目の同じ、いや、初日に近いかな?いずれにせよオレンジをベースに赤が射しますね。ピンクまではいきませんけれども。まだ温度は上がり切っていませんが、ブラッドオレンジやピンクグレーフルーツの香りがよく開いていますね。少しフラワリーな部分もありますが、果実香はとても深く、重さを感じさせます。
口に含みますと‥うん、重くフルボディ。この三日目はとてもまろやかで深い。旨味も十分で酸味がしなやかに溶け込みます。透明感あるミネラリーな部分も持っているのですが、深い旨味がとてもおいしいですね。
複雑さという意味では同じく単一品種な樽ドネに軍配があがりますが、デッシミスの個性はやはり忘れられないし、代え難いもの。くすぐるように繊細なタンニン、色の濃い皮を持つ柑橘の複雑さがいいですね。まだまだ温度を上げれるのですが、三日目は少し冷えていても十分に旨味も香りも開いて感じます。
三日目が完成型ですね。デッシミスの個性爆発しています!
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