Dessimis Pinot Grigio 2016 Vie di Romans
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デッシミス・ピノ・グリージョ 2016 ヴィエ・ディ・ロマンス
《イタリア/フリウリ/白/ピノ・グリージョ/辛口》
フリウリ州‥スロヴェニアとの国境沿いの街、ゴリツィアの西に位置するマリアーノ・デル・フリウリ地区はイソンツォDOCエリアとなります。祖父の代から100年もの間、ガッロファミリーの手によって守られたその土地は、水はけのよい平らな土地で、海と山の両方から吹く風に恵まれるミクロクリマを持つテロワール。
17歳で家業を継いだ現オーナーのジャンフランコ・ガッロ氏は、同地区のみならずイタリアの生産者が一目置き、イタリア最高の白ワインの生産者として最も尊敬され信頼される‥「北の巨人」と形容される人物です。ジャンフランコが三代目‥次は息子さんが四代目となるそうです。
創立以来「ガッロ」と名乗っていたものの、カリフォルニアの大規模なワイン生産者である「(EJ)ガッロ」との商標権の兼ね合いで1986年に名称の変更を余儀なくされたそうで、現在の「ローマ人の道」という意味のヴィエ・ディ・ロマンスになったそうです。
彼の考えるテロワールとは「人間、土地、気候、ブドウ品種」であり、その中でも最も重要なのは「人間」であるとのこと。また「テロワールに最も適したブドウを栽培すること」「凝縮したブドウを作ること」「完熟期を迎えたブドウを最高のタイミングで収穫すること」な、当たり前のことを当たり前に‥に向かって邁進する生産者。
流行の醸造法や、市場に流されることなく、彼がその地で得た知識、経験を元に毎年生み出されるワイン達。何度かご一緒させて頂きましたが、本当に偉大さを感じる人物ですね。そこには包容力もあるわけですが、自身の目標や探求へのストイックさをヒシヒシと感じます。とても几帳面でブレない‥見習いたいものですね。
2009年からの樽発酵やマロラクティック発酵の廃止、リースリングレナーノ単一のプリン・フリートや、メルロからなるロゼのチャントンスの生産終了もあり、転換期にあると言え、それまでのスタイルとの差異は少なからず感じて当然ですが、思想としては進化をたどっているはずなんですよね。
イソンツォDOCエリアは北緯45度から46度、日本でいうと最北端である稚内あたりとなります。この地区は平地で海抜も30m前後ながら「北」であることや、大陸性気候と地中海性気候の両方を併せ持つこの地区だからこその要因も多数でそのひとつにロシアから吹き付ける冷たく乾いた風"ボーラ"が平地ながら滞留を興さずに冷涼な気候を保っています。
イソンツォ川の南部は粘土質や石灰質が多い土壌で、畑での仕事量は半端ない。グリーンハーヴェストは二度行い、一本の樹から収穫されるブドウは600g、一本のワインを造るに1000gのブドウが必要と言われているので、そのためには二本の樹から収穫したブドウを使うことになりますね。
また徹底的に酸化を防ぐ醸造も彼ならでは。除梗の段階から極力酸化を防ぎ、発酵が始まるまではドライアイスの粒を混ぜることで酸素を寄せ付けません。またタンクには窒素を充填することで酸化を防ぐ徹底ぶる。酸化を防ぎきった果汁は、ブドウの粒の中味と同じ色、香り、味を持つそうです。
2016年のビンテージ情報
年明けから平均年よりも暖かくなり、結果的に発芽が少し早まりました。
春の後半からは雨が降り出し、5月下旬から6月中旬にかけて20日間続けて
降雨がありました。その後、気候が回復し、日中の気温は30度を越え始め
収穫期まで安定した気候が続きます。温暖なビンテージとなりましたが、
昼夜の寒暖差もしっかりあり香りの熟成、タンニンの熟成も良く、完熟し
たブドウを収穫できました。ワイン全体の出来は素晴らしく、味わいも豊
かで香りには太陽の温かみがかなり感じられます。オーナーのジャンフラ
ンコ氏もワインの出来には非常に満足しており、自身が作った年の中でも
素晴らしい年のひとつと語っています(ほんまかいな)。
ヴィエ・ディ・ロマンスの熟成樽に関しての追加情報
西野嘉高もテクニカル情報を書きながら気になっていたのが熟成樽の容量の
情報なんですね。225Lと228L‥その3Lの違いに何があるのか?輸入元さんか
ら回答が来ましたので追加情報として記載しておきます。
樽の製造メーカーによってブルゴーニュタイプである228L容量の樽と、ボル
ドータイプである225Lの樽のが異なるそうです。元々ヴィエ・ディ・ロマン
スではブルゴーニュタイプの228Lの樽を使用したいたそうですが、樽メーカ
ー(ダルジュ、バロン)がブルゴーニュタイプ(228L)の樽の製造を止めて
しまい、以降はその樽メーカーからボルドータイプ(225L)の樽を購入する
ことになったので、熟成に使用する樽の容量が複数あるようです。
なお、現在ヴィエ・ディ・ロマンスのワインの熟成に使用されている樽のメ
ーカーとタイプは下記の通り。なお、3Lの差はワインに及ぼす影響はないと
のことです。
・タランソ :ブルゴーニュタイプ
・セゲンモロー:ブルゴーニュタイプ
・ダルジュ :ボルドータイプ
・バロン :ボルドータイプ
「デッシミス」とは"農家の年貢"という意味だそうです‥。いまどき「年貢」なんて単語を聞くのも稀ですが、その昔‥農家は「出来のいい」農作物を奉納しなければならなかった…。つまり「年貢」となるのは「出来のいい作物」なんですね。よってヴィエ・ディ・ロマンスの出来のいいワインとして「デッシミス」という名前となったようです(たぶん)。
デッシミス畑はヴィエ・ディ・ロマンスが所有する畑の中でも比較的広い7.50haの畑と2014年は記載していましたが2015年の情報では9.05haに面積が増えています。植樹は1985年、1999年、2002年。平均樹齢は21年と2014年は記載していますが樽ドネ同様に栽培面積の増加とともに平均樹齢は若くなり19年となっております。こちらも植え替え他の要因で若い樹からのブドウも混醸できるようになったのかもしれませんね。海抜は34m。砂利や小石を含み、鉄分由来の赤みがかった粘土質の土壌。
2016年ビンテージは9月の2日、3日、7日の3日間。手摘みで収穫されたピノ・グリージョは、約8度でのコールドマセラシオン。ステンレスタンクでの発酵(2/3)とバリックでの発酵(1/3)の併用では18日間。マロラクティック発酵は施されず、澱と接触させたままバリック(50%が225L、50%が228L)で約9ヶ月の樽熟成後瓶詰め。2017年の7月26日と28日に瓶詰めされ、約8ヶ月の瓶熟成を経ます。
アルコール度数は2009年が15.56度、2010年が14.21度、2011年が15.00度、2012年は15.23度、2013年は14.66度、2014年は13.20度、2015年は13.8度、この2016年は14.92度となります。
数年間まではもっと赤味がかった色を持つピノ・グリージョでしたが、この数年は淡さを感じる薄いピンク色。スキンコンタクトによる色の抽出と思われがちですが、決してそうして色が付いているわけではないそうです。ピノ・ノワールの亜種のひとつであるピノ・グリージョが完熟すると、ブドウ果皮の色がしっかりと果汁に伝わり、スキンコンタクトをせずとも果汁に色が付くそうです。また、搾りたてのモストから酸化が進めば透明に近づくそうですが、ヴィエ・ディ・ロマンスでは酸化を嫌う為に搾りたて同様のピンク色が保たれるそうです。
独断と偏見に満ち溢れた極主観的毒味
2016年のヴィエ・ディ・ロマンスの毒味はこのデッシミスからとなりました。お馴染みのラベルデザイン。コルクはなかなかの質の5cm。冷蔵庫キンキン温度、グラスはヴィノムのブルゴーニュ型です。2014年よりも2015年と色合いは濃く感じましたが、さらに赤味が強く感じられますね。もちろん濁りは皆無ですし、酸化したようなオレンジや玉ねぎではありませんがそんな感じでもあります。バックラベルに記載のアルコール度数は14.5度ですが実際には14.92度と(もちろんロットによって誤差はあるだろう)ほぼ15度なっており久々に度数が高めとなっていますね。
樽発酵を感じさせる樽のニュアンスに負けない果実香は、デッシミスらしい熟れた夕張メロン、マンゴーの香り低音域にあり、香りからはヒエヒエに感じさせないそれとは別に皮や果肉の色の濃い、柑橘としても低音域の香りがウーハー。ボウルを持てばはやり冷たいが、少し温度が上がってきた段階のようななめらかな香りとまとまり。
口に含みますと、うーん、重みもあるミネラル、重厚な果実味がありますが、少し白いハーブもって重さを重苦しくはさせない。香りも甘過ぎはしなかったが、味わいも甘過ぎはしない。アペロールかカンパリをベースに、夕張メロン、マンゴー、オレン
ジのカクテルで間違いない。まだ一杯目だが、旨味に富み、グレープフルーツか、ブラッドオレンジのピール的な苦味も波状攻撃な複雑さ。
2015年は2016年ほど苦味がアクセントにはなってなかったし、もう少しミネラリーだったかと思うが、この2016年はすでにまろやかに深く重い。しかし、重さの中にも苦味に近い部分に爽やかで青くないハーブもあるし、タンニンも感じるが、旨味を牽引
するような酸味もしっかりとあるのでユルさはない。
二杯目。一杯目からまるで二杯目だったのでそうは変わりません。確かに高めのアルコールによりボリュームや甘味もあるわけですが、これがデッシミスにはお似合いなんですよね。メロンやマンゴーが溶け込むと少し柑橘のポジショニングは前になりますが、デッシミスらしいバランスがとてもいいですね。温度が上がってきた二杯目の方が酸味も筋が通ってきたかな。やっぱり複雑さもあるし、個性もあるし、非常に満足度の高いワインです。それにしても苦味の個性がいいですね。スモークしたような感じはなく、うーん、余韻も長いなあ。
二日目も冷蔵庫キンキン温度、グラスはヴィノムのブルゴーニュ型です。色が少し変わったかな?夕張メロン果汁っぽい色合いになりました。香りにも夕張メロン、白桃や洋梨の果汁があり蜜っぽい甘味ある香りも深い。口に含むとやっぱり苦味が2016年の特徴ですね。でも、ちょっとカスタードっぽい風味(甘味)もあって面白いし、少しタンニンを感じるのがデッシミスっぽい。2016年はアルコール度数も上がったんだけれども、そのボリュームをこの苦味がいい意味で抑えてくれてるんだな。
うん、旨いなあ。デッシミスって唯一無二の個性があってほんと好き。でも、やっぱりチャントンス(メルロのロゼ)をちょっと思い出しちゃうなあ。余韻、味の長さもやっぱりいい。
三日目も冷蔵庫キンキン温度、グラスはヴィノムのブルゴーニュ型です。少し色味は赤味があるかな。香りの要素は初日から同じ。夕張メロンを軸に桃やマンゴー系果汁、と柑橘ですね。適度なボリューム感があり、適度なデッシミスらしい甘味がある。三日目はまろやかさが苦味よりも前な状態。うーん、デッシミスいいねえ。2015年も良かったんだけど、2016年のボディ、ボリュームがステキやな。やっぱりヴィエ・ディ・ロマンスは14度ちょいあるのがいいのかもしれない。密度感もあってフルボディ。旨味からの余韻が長いねー。
デッシミス独特の世界観、いいですね。
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