Flors di Uis 2019 Vie di Romans
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フロールス・ディ・ウィス 2018 ヴィエ・ディ・ロマンス
《イタリア/フリウリ/白/マルヴァジア・イストリアーナ57%、リースリング・レナーノ35%、フリウラーノ8%/辛口》
フリウリ州‥スロヴェニアとの国境沿いの街、ゴリツィアの西に位置するマリアーノ・デル・フリウリ地区はイソンツォDOCエリアとなります。祖父の代から100年もの間、ガッロファミリーの手によって守られたその土地は、水はけのよい平らな土地で、海と山の両方から吹く風に恵まれるミクロクリマを持つテロワール。
17歳で家業を継いだ現オーナーのジャンフランコ・ガッロ氏は、同地区のみならずイタリアの生産者が一目置き、イタリア最高の白ワインの生産者として最も尊敬され信頼される‥「北の巨人」と形容される人物です。ジャンフランコが三代目‥次は息子さんが四代目となるそうです。
創立以来「ガッロ」と名乗っていたものの、カリフォルニアの大規模なワイン生産者である「(EJ)ガッロ」との商標権の兼ね合いで1986年に名称の変更を余儀なくされたそうで、現在の「ローマ人の道」という意味のヴィエ・ディ・ロマンスになったそうです。
彼の考えるテロワールとは「人間、土地、気候、ブドウ品種」であり、その中でも最も重要なのは「人間」であるとのこと。また「テロワールに最も適したブドウを栽培すること」「凝縮したブドウを作ること」「完熟期を迎えたブドウを最高のタイミングで収穫すること」な、当たり前のことを当たり前に‥に向かって邁進する生産者。
流行の醸造法や、市場に流されることなく、彼がその地で得た知識、経験を元に毎年生み出されるワイン達。何度かご一緒させて頂きましたが、本当に偉大さを感じる人物ですね。そこには包容力もあるわけですが、自身の目標や探求へのストイックさをヒシヒシと感じます。とても几帳面でブレない‥見習いたいものですね。
2009年からの樽発酵やマロラクティック発酵の廃止、リースリングレナーノ単一のプリン・フリートや、メルロからなるロゼのチャントンスの生産終了もあり、転換期にあると言え、それまでのスタイルとの差異は少なからず感じて当然ですが、思想としては進化をたどっているはずなんですよね。
イソンツォDOCエリアは北緯45度から46度、日本でいうと最北端である稚内あたりとなります。この地区は平地で海抜も30m前後ながら「北」であることや、大陸性気候と地中海性気候の両方を併せ持つこの地区だからこその要因も多数でそのひとつにロシアから吹き付ける冷たく乾いた風"ボーラ"が平地ながら滞留を興さずに冷涼な気候を保っています。
イソンツォ川の南部は粘土質や石灰質が多い土壌で、畑での仕事量は半端ない。グリーンハーヴェストは二度行い、一本の樹から収穫されるブドウは600g、一本のワインを造るに1000gのブドウが必要と言われているので、そのためには二本の樹から収穫したブドウを使うことになりますね。
また徹底的に酸化を防ぐ醸造も彼ならでは。除梗の段階から極力酸化を防ぎ、発酵が始まるまではドライアイスの粒を混ぜることで酸素を寄せ付けません。またタンクには窒素を充填することで酸化を防ぐ徹底ぶる。酸化を防ぎきった果汁は、ブドウの粒の中味と同じ色、香り、味を持つそうです。
2019年のビンテージ情報
冬から春にかけて厳しい気候が続いたが、夏前から熟成期にかけて回復、気
温も上がり安定しました。ブドウの芽が出始めたのは4月上旬。気候は安定し
ていましたが、5月に入ってからは気温が下がり寒く雨が多かった。湿度は高
く、ブドウの栄養バランスが崩れることが懸念されたが6月に入ると気温は上
がり、開花を迎える品種には好条件の気候となった。気温の上昇による水不
足もあったが、好転の影響でブドウの葉は成長、懸念していた栄養不足も回
復。7月上旬は気温が下がり、雨も降り涼しくなりました。雹が降ることもあ
りましたが、それ以降は天候は回復、昼夜の寒暖差(昼33度、夜16度)も十
分にあり、ブドウにとって恵まれた気候条件となりました。8月以降、熟成を
迎えるまで好転が続きました。出来上がったブドウはキレイに熟成したアロ
マをもち、酸と糖度のバランスが良く、フェノールの理想的な熟成を遂げま
した。
ヴィエ・ディ・ロマンスの熟成樽に関しての追加情報
西野嘉高もテクニカル情報を書きながら気になっていたのが熟成樽の容量の
情報なんですね。225Lと228L‥その3Lの違いに何があるのか?輸入元さんか
ら回答が来ましたので追加情報として記載しておきます。
樽の製造メーカーによってブルゴーニュタイプである228L容量の樽と、ボル
ドータイプである225Lの樽のが異なるそうです。元々ヴィエ・ディ・ロマン
スではブルゴーニュタイプの228Lの樽を使用したいたそうですが、樽メーカ
ー(ダルジュ、バロン)がブルゴーニュタイプ(228L)の樽の製造を止めて
しまい、以降はその樽メーカーからボルドータイプ(225L)の樽を購入する
ことになったので、熟成に使用する樽の容量が複数あるようです。
なお、現在ヴィエ・ディ・ロマンスのワインの熟成に使用されている樽のメ
ーカーとタイプは下記の通り。なお、3Lの差はワインに及ぼす影響はないと
のことです。
・タランソ :ブルゴーニュタイプ
・セゲンモロー:ブルゴーニュタイプ
・ダルジュ :ボルドータイプ
・バロン :ボルドータイプ
「フロールス・ディ・ウィス」とは「花の香り」という意味。単一品種からなる個性と、らしさ溢れる酒質が魅力のヴィエ・ディ・ロマンスのラインナップの中でドゥトゥンと、このフロールス・ディ・ウィスのみ混醸となります。このフロールス・ディ・ウィスに混醸される品種は三種類。セパージュ比率はビンテージによって異なる可能性がありますが、マルヴァジア・イストリアーナを主体にリースリング・レナーノ、フリウラーノが混醸されます。
合計の畑の面積は3,88haとこれまでと同じ。1987年、1995年、2001年に植樹されたブドウとなり平均樹齢27年のブドウ樹は、ボキス、チャンパニス、ヴィエ・ディ・ロマンスの畑で栽培されており、砂利や、小石を含み、鉄分を多く含む赤味がかった砂質のシルト質土壌だそうです。海抜は29mから34mの畑で収穫されたブドウで醸されます。
収穫は9月の18日、24日で例年フリウラーノ→リースリング→マルヴァジアの順番に収穫されます(収穫日にそれなりの差がありますね)。ブドウは約8度でのコールドマセラシオンの後、16度から19度に温度管理されたステンレスタンクで澱と接触させたまま12日から20日間のアルコール発酵。マロラクティック発酵は行われずにステンレスタンクで澱と接触させたまま約8ヶ月の熟成後、2020年の3月22日に瓶詰めされ11ヶ月の瓶熟成となります。
アルコール度数は2008年が14.4度、2009年が14.86度、2010年が13.9度、2011年が14.4度、2012年は14.42度、2013年は14.00度、2014年は12,60度、2015年は13,10度、2016年は14度、2017年は13.5度、2018年は13,44度、2019年は13,33度となります。
独断と偏見に満ち溢れた極主観的毒味
お馴染みのヴィエ・ディ・ロマンスのラベルですね。2019年は商品名のフォントが少し太くなったように見えますが、2018年と比較すると太さは同じなんだけど、少し色味が濃くなったようですね(2018年はもう少し薄いというか、2019年は黒味が濃くなったというか、でも少し茶色入ってると思う)。んなことはどっちでもいいですね。コルクはなかなかの質の5cm。冷蔵庫キンキン温度、グラスは、シュピゲラウのデフィニションのボルドー型です。色味は少し黄緑も入りますが、中程度の黄色味を持ちます。現在の温度は6,8度。柑橘の蜜に、スパイスとハーブの香。フリウラーノっぽいやわらかい南国フルーツ(バナナ)もすこーし。柑橘は思ったよりも皮の色の濃いめ。新鮮なオリーブオイルの風味も少しある。芳香過ぎない黄色の花、温度は低めですが、十分に複雑な香りがあるのは混醸らしさ。ミネラルの香りが前過ぎないのも好印象ですね。グレープフルーツの白いピロピロや、苦味を連想させるハッサクな柑橘もあり、そこにハーブ系の緑の要素をまとう感じ。
口に含みますと、うん、この数年落ち着いたアルコール度数で、いい意味でニュートラル。高いアルコールのボディや熱量なくとても飲みやすい。飲み口にはさすがにミネラルも感じますが、これも前過ぎないのもいい。少し新鮮さを感じさせる酸味はありますが、内側にプチプチとするものがあるわけではない。すこーし、ジンジンの手前、ジンとしたスパイス感もいいアクセントで、スーっとした余韻も長い。
マルヴァジア、リースリング、フリウラーノ。この混醸も補い合いで一体感がありますが、かなり複雑。口に入る瞬間から飲み込んでからの戻り香まで、時間経過も含めて、いろんな表情を見せてくれます。なかなか温度を上げ辛い状況ですが、これは温度上げると、いい厚みも出てきそうだ。
二日目もシュピゲラウのデフィニションのボルドー型。冷やしてませんで、9,6度です。おお、マルヴァジア、リースリング、フリウラーノのボディ感が香りから感じられますね。重厚でまろやかな香り。柑橘やハーブの角は取れ、丸みを帯びまとまって
います。飲み口にもまとまりがありますね。酸味にまだ新鮮さがあり伸びがあります。うん、おいしいですね。13度ちょいのアルコール度数もあり飲みやすさもあります。次々と押し寄せるような複雑さではなく、最初から最後まで同じ複雑さが持続するタイプ。
温度が上がってきて俄然良くなりますね。ついつい、白だと冷やしてしまいますし、このワインも低い温度でも萎縮するわけではありませんが、10度前後あたりがいいかもしれませんね。
三日目もシュピゲラウのデフィニションのボルドー型。冷やしてません。温度は9,8度。柑橘と蜜、黄色の花とハーブの香り、青リンゴの果汁。味わいもストレスなく開き、旨味が出てきて厚みも感じられますね。やっぱりキンキンには冷やさない方がいいのかもしれません。初日から変わらないおいしさが持続、バランスもいいですね。華やかさと芳香さがあるんですが、密度があり、程よい厚みのある果実の香味が中心というか、土台にあるので、安定してるんだなあ。揮発的に飛んでなくなる感じじゃない。
フロールスは、果汁のまる絞り感があっておいしい。華やか過ぎないので疲れません。ちょっと脱線しますが、試飲会や、お客様ならデパートでの試飲とかね。華やかなワインや、濃い(だけの)ワインは、プラコップでも、ワイングラスでも、たかだかの量でおいしく感じるし、印象に残るインパクトがあるんですよ。ちょっとだけでも特徴がわかりやすい。だから選ばれがちなんだけれども、そういうワインは一本飲むのは実は疲れる。いやいや、あたしのように一人で一本飲めへんし‥と言われたらそれまでだけれども‥。
ヴェロネッリ誌のアンドレア・アルピ氏のお気に入りの2019年のフロールス。彼がこのワインを評価した理由はどこにあるのか?そいう指標としても飲んでみてもいいのではないかな。もちろん、おいしいですよ!
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