Flors di Uis 2021 Vie di Romans
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フロールス・ディ・ウィス 2020 ヴィエ・ディ・ロマンス
《イタリア/フリウリ/白/マルヴァジア・イストリアーナ55%、リースリング・レナーノ31%、フリウラーノ14%、/辛口》
フリウリ州‥スロヴェニアとの国境沿いの街、ゴリツィアの西に位置するマリアーノ・デル・フリウリ地区はイソンツォDOCエリアとなります。祖父の代から100年もの間、ガッロファミリーの手によって守られたその土地は、水はけのよい平らな土地で、海と山の両方から吹く風に恵まれるミクロクリマを持つテロワール。
17歳で家業を継いだ現オーナーのジャンフランコ・ガッロ氏は、同地区のみならずイタリアの生産者が一目置き、イタリア最高の白ワインの生産者として最も尊敬され信頼される‥「北の巨人」と形容される人物です。ジャンフランコが三代目‥次は息子さんが四代目となるそうです。
創立以来「ガッロ」と名乗っていたものの、カリフォルニアの大規模なワイン生産者である「(EJ)ガッロ」との商標権の兼ね合いで1986年に名称の変更を余儀なくされたそうで、現在の「ローマ人の道」という意味のヴィエ・ディ・ロマンスになったそうです。
彼の考えるテロワールとは「人間、土地、気候、ブドウ品種」であり、その中でも最も重要なのは「人間」であるとのこと。また「テロワールに最も適したブドウを栽培すること」「凝縮したブドウを作ること」「完熟期を迎えたブドウを最高のタイミングで収穫すること」な、当たり前のことを当たり前に‥に向かって邁進する生産者。
流行の醸造法や、市場に流されることなく、彼がその地で得た知識、経験を元に毎年生み出されるワイン達。何度かご一緒させて頂きましたが、本当に偉大さを感じる人物ですね。そこには包容力もあるわけですが、自身の目標や探求へのストイックさをヒシヒシと感じます。とても几帳面でブレない‥見習いたいものですね。
2009年からの樽発酵やマロラクティック発酵の廃止、リースリングレナーノ単一のプリン・フリートや、メルロからなるロゼのチャントンスの生産終了もあり、転換期にあると言え、それまでのスタイルとの差異は少なからず感じて当然ですが、思想としては進化をたどっているはずなんですよね。
イソンツォDOCエリアは北緯45度から46度、日本でいうと最北端である稚内あたりとなります。この地区は平地で海抜も30m前後ながら「北」であることや、大陸性気候と地中海性気候の両方を併せ持つこの地区だからこその要因も多数でそのひとつにロシアから吹き付ける冷たく乾いた風"ボーラ"が平地ながら滞留を興さずに冷涼な気候を保っています。
イソンツォ川の南部は粘土質や石灰質が多い土壌で、畑での仕事量は半端ない。グリーンハーヴェストは二度行い、一本の樹から収穫されるブドウは600g、一本のワインを造るに1000gのブドウが必要と言われているので、そのためには二本の樹から収穫したブドウを使うことになりますね。
また徹底的に酸化を防ぐ醸造も彼ならでは。除梗の段階から極力酸化を防ぎ、発酵が始まるまではドライアイスの粒を混ぜることで酸素を寄せ付けません。またタンクには窒素を充填することで酸化を防ぐ徹底ぶる。酸化を防ぎきった果汁は、ブドウの粒の中味と同じ色、香り、味を持つそうです。
2021年のビンテージ情報
1980年代のようなクラシカルなビンテージ。全体的に生育サイクルはゆった
りで、ブドウにしっかりと酸が残った状態で収穫ができました。ミネラル分
と糖とのバランスも取れた仕上がりとなっています。厳しい冬の影響で萌芽
は遅れました。4月上旬に例外的な霜がおり、成育初期段階の新芽を襲いま
したが、生育サイクルがゆったりだったために被害は限定的でした。非常に
乾燥した4月の後、5月には多くの降雨があり、広範囲にベト病の被害が出た
ため、いくつかの畑では手作業で被害を受けた葉や房を除去する必要があり
ました。6月中旬には天候が回復、特に早熟の品種では、例年よりも10日か
ら13日ほど開花が遅れました。夏は温暖な日と冷涼な日が交互に訪れ、ブド
ウが成熟。最終的に降雨量は例年を下回り、その後も好天が続いて平年より
も遅れながらも9月1日から3日に収穫を迎えました。
ヴィエ・ディ・ロマンスの熟成樽に関しての追加情報
西野嘉高もテクニカル情報を書きながら気になっていたのが熟成樽の容量の
情報なんですね。225Lと228L‥その3Lの違いに何があるのか?輸入元さんか
ら回答が来ましたので追加情報として記載しておきます。
樽の製造メーカーによってブルゴーニュタイプである228L容量の樽と、ボル
ドータイプである225Lの樽のが異なるそうです。元々ヴィエ・ディ・ロマン
スではブルゴーニュタイプの228Lの樽を使用したいたそうですが、樽メーカ
ー(ダルジュ、バロン)がブルゴーニュタイプ(228L)の樽の製造を止めて
しまい、以降はその樽メーカーからボルドータイプ(225L)の樽を購入する
ことになったので、熟成に使用する樽の容量が複数あるようです。
なお、現在ヴィエ・ディ・ロマンスのワインの熟成に使用されている樽のメ
ーカーとタイプは下記の通り。なお、3Lの差はワインに及ぼす影響はないと
のことです。
・タランソ :ブルゴーニュタイプ
・セゲンモロー:ブルゴーニュタイプ
・ダルジュ :ボルドータイプ
・バロン :ボルドータイプ
「フロールス・ディ・ウィス」とは「花の香り」という意味。単一品種からなる個性と、らしさ溢れる酒質が魅力のヴィエ・ディ・ロマンスのラインナップの中でドゥトゥンと、このフロールス・ディ・ウィスのみ混醸となります。このフロールス・ディ・ウィスに混醸される品種は三種類。セパージュ比率はビンテージによって異なる可能性がありますが、マルヴァジア・イストリアーナを主体にリースリング・レナーノ、フリウラーノが混醸されます。
合計の畑の面積は3,88haとこれまでと同じ。1987年、1995年、2001年に植樹されたブドウとなり平均樹齢29年のブドウ樹は、ボキス、チャンパニス、ヴィエ・ディ・ロマンスの畑で栽培されており、砂利や、小石を含み、鉄分を多く含む赤味がかった砂質のシルト質土壌だそうです。海抜は29mから34mの畑で収穫されたブドウで醸されます。
収穫は2021年の9月16日と21日、29日で例年フリウラーノ→リースリング→マルヴァジアの順番に収穫されます(収穫日にそれなりの差がありますね)。ブドウは約8度でのコールドマセラシオンの後、16度から19度に温度管理されたステンレスタンクで澱と接触させたまま13日、17日、20日と品種によって違うアルコール発酵期間。マロラクティック発酵は行われずにステンレスタンクで澱と接触させたまま約8ヶ月の熟成後、2022年の3月24日に瓶詰めされ9ヶ月の瓶熟成となります。
アルコール度数は2008年が14.4度、2009年が14.86度、2010年が13.9度、2011年が14.4度、2012年は14.42度、2013年は14.00度、2014年は12,60度、2015年は13,10度、2016年は14度、2017年は13.5度、2018年は13,44度、2019年は13,33度、2020年は14,22度、2021年は13,84度となります。
独断と偏見に満ち溢れた極主観的毒味
お馴染みのデザイン。コルクの質は良質の5cmです。冷蔵庫キンキン温度。グラスはシュピゲラウのデフィニションのボルドー型です(ブルゴーニュ使い)。色調は薄らと黄緑色が挿すレモンイエローでもちろんクリア。和梨と洋梨の果汁に少しの桃、グレープフルーツの果汁をステア、最後ハーブ(ミントではない)を乗せたカクテルのような香り。少しバナナの風味があるのはフリウラーノかな。とにかくにも口に含みますと、うん、複雑。2020年はマルヴァジアが73%と支配的なセパージュ比率でしたが、この2021年は55%と過半数ながら、リースリングやフリウラーノの比率が増えています。クリアなミネラルも感じますが、クリアな果実の香味が際立ちますね。まったく樽の風味を勘違いさせる要素もない。アルコール感は13度後半らしいが、密度感のあるたっぷりの果実味ですが、ステンレス仕上げかつ、上質な酸味があり潤してくれますね。スパイスの風味があり、そこに近い終盤に苦味があり爽快。スパイスの風味を伴う余韻は非常に長い。三種の品種のどれがどれ‥ではなく、それぞれの組み合わせで新しい個性も垣間見れる複雑さ、こういう混醸は温度変化でもかなり表情豊かなので楽しみですね。この混醸の隙のなさはやっぱり評価できます。メロン系もありますね。デッシミスのような夕張メロンではなく、緑の果肉のメロン。うん、メロンあるある。このところ苦味、苦味といいますが、このスパイスを伴う苦味もいいですね。果実の甘味とのコントラストが飽きない。
少し温度が上がると、ヴィエ・ディ・ロマンスらしい果実味の密度と旨味にクリーミーさを感じます。とはいえ、シャープさがなくなるわけではないのは、ハーブや酸味、苦味があるからなんですね。温度が上がると少し重心が低くなる感じ。グラスはユニバーサル型と迷ったのですが、これぐらい大きくても座りもよく似合っています。
二日目も冷蔵庫キンキン温度、グラスはシュピゲラウのデフィニションのボルドー型です(ブルゴーニュ使い)。初日と香りの構成は同じですが、密度感がさらに増しました。旨味も増したように感じますが、低い温度と酸味にフレッシュさがあり、重苦しくしない。度数も13度台ですしね。初日よりも混醸らしいまとまりが出てきましたね。終盤のスパイスも含めて非常に複雑。この数年のヴィエ・ディ・ロマンスのひとクラス上感は、このフロールスにも感じます。複雑さと余韻の長さはイタリアワインの中でも随一ですね。温度が上がると、やわらかな重心を感じますが、ミネラル感も出てきますね。クリアで瑞々しい感じは、温度が上がっても健在。
三日目も冷蔵庫キンキン温度、グラスはシュピゲラウのデフィニションのユニバーサル型にしました。残りも少ないもんで‥。香りは初日から一貫しています。初日ほど強くはありませんが、キンキン温度でもしっかり香味は感じますね。洋梨とメロンにバナナ、スパイスと苦味は相変わらずおいしい。
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