Ai Suma Barbera d'Asti 1989 Braida
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アイ・スマ バルベーラ・ダスティ 1989 ブライダ
《イタリア/ピエモンテ/赤/バルベーラ/フルボディ》
アスティの南東、ロケッタ・タナロに居を構えるのがブライダ。地域の大量生産品であったバルベーラ・ダスティにクリュの概念や、バリックによる熟成を取り入れた革新派でもあります。看板となるクリュ・バルベーラ・ダスティは三種類。ブリッコ・デッラ・ビゴッタと、このブリッコ・デル・ウッチェローネ、そしてアイ・スーマとなります。
ロケッタ・タナロの丘の頂上付近に位置するブリッコ・デル・ウッチェローネの区画は約11ha。アイ・スーマはその中にある約3haのブドウが使用されています。元々は、遅詰みした熟度の違うブドウが偶然にも‥ということで1989年にアイ・スーマが生まれましたが、現在でも公式サイトには、レイト・ハーヴェストのバルベーラが使用されていることが記載されていますが、基本的に、ウッチェローネもアイ・スーマも同じ区画であり記載のテクニカルシートも実は同じ、一卵性双生児的存在です。温度管理されたタンクで20日間の醸しとアルコール発酵の後、フランス産のバリックで15ヶ月の樽熟成の後、12ヶ月の瓶熟成を経てリリースされます。
独断と偏見に満ち溢れた極主観的毒味(2011年3月)
コルクは非常に良質の5.5cm。あまりにも状態が良く、痩せた感じではないのでリコルクされている可能性もなきにしもあらず‥かもしれないが、そのお尻は真っ黒に染まっており、それなりに時間が経過してるはずを思うとそうではないのかもしれない。コルクにAi Sumaの文字は見られず‥は、突然思い付いたように素晴らしいワインが出来た証でもあるかもしれないが、コルクのロットナンバー的なものは見当たらないが、EUという表記があるのが気にかかるが、通貨が統一されたのが、それ以降なだけで、それまでもEUは存在していたわけですが、いや、そういう意味のEUではないのかもしれない。それにしてもコルクの状態も良い。1989年のコルクとは思えないほど。
グラスは迷ってブルゴーニュ型。オレンジ色を帯びたエッジに透明感があり、中心部に向って焦げ茶的な色味に変化する。中心分は上から十分に透けてみえる色合いで、香りがとても広がっている。非常に甘味のある柑橘ピールのコンポートに、紹興酒というよりはシェリー、しかもアモンティリャードのようで、ヴィンサントのような甘味ある香りもある。まさに、遅摘みされた葡萄は、まるで陰干ししたかのようなドライフルーツ状だったに違いない。香りに勢いはとても力強くうっとりとさせる。
口に含むと圧倒的な旨味を増し、甘味ある液体が口の中を満たす。熟成した酒精強化ワイン‥ヴェルモットの雰囲気もある。高いアルルコールは丸くなるが、果実の部分はキチンと熟成してゆく。奥底に枯れた花、濡れたシガー。味わいも香り同様に力強さ深さを感じる。そう深さがあるんだな。もちろん、余韻も長い。甘味の香りの中にほんのりとヴァニラの香りもある。たった6ヶ月ではあるが、新樽(100%だと思う)バリックで熟成された香味がまだ残っているようだ。終盤と戻り香に、ヴィンサント的なカラメル香が香ばしい。ブルゴーニュ型グラスにまったく負けない酒質。
GAJAのバルベーラ・ダルバ1982とはまったく違う。これは、あくまでもAi Sumaであり、他のバルベーラとは違う個性を持っている。これ以上遡ることができない初ビンテージなわけですが、素晴らしい状態と、素晴らしい熟成を見せつけられる。飲み頃か?飲み頃です。これだけ熟成香が華開いているワインも久々。熟成しているのに、エレガントではない‥という意味ではない力強さがみなぎる。戻り香に木質な香り、タンニンは甘味を帯びて熟れ、酸味は糖度の高いピンクグレープフルーツそのもの。
旨いっ!!旨過ぎるっ!!
二杯目は、グラスをオヴァチュアに変えてみる。チョークの香りを強く感じ、その後、そのシェリーっぽい熟成香にヴァルサミコが混じるように感じる。咳き込むほどの香りの開放感。口に含むと、ブルゴーニュ型よりも一塊にまとまって口の中で佇むが、その存在感も良い。オヴァチュアの方が、含んだ香味により果実を感じるかもしれず、ここは、グラスの使い方は迷うなぁ。ゆったりと熟成した香味を楽しみたいのならばブルゴーニュ型ですが、熟成したニュアンスを控えめに、より果実の香味を‥となればオヴァチュアかもしれません。こういう時にオレゴン・ピノのグラスがあれば、似合うかもしれませんね。
もちろん、オヴァチュアで飲んでも、ヴィンサントや、アモンティリャードのような香ばしい甘味を持つ香りが楽しめるが、なんなんだろうな‥この比喩は卑怯かもしれないが、チンチナートの熟成後の姿はこうなるのではないか?と思う。ただし、チンチナートはこれほど持たない。甘味を帯びる熟成香の複雑さたるや尋常ではない。その熟成香に紹興酒的東洋を感じなくもないが、チンチナートは、漢方やオリエンタルなフルーツ香があるが、この熟成したアイ・スマそれらは感じるわけではないが、それとは違う熟成香ですら複雑で、甘味も複雑‥とにかく、この複雑さのレベルは半端ない。
これは、凄いワインだ。
口の周りで濡れたそれは、酸化してゆく。舌なめずりをすると、熟成香とは違う酸化香を感じる。また、口の中を濡らす‥ああ、素晴らしい。
ボトル側面にも澱。これほど状態が良く、これほど開いている古酒も久しぶりです。香りはしっかりと熟成し、アルコールだって丸みを帯び、甘味をまとう。真っ当に熟成しているが、漲る力強さを感じる。こんなワイン、こんな古酒は初めてである。バルベーラは、長らくネッビオーロに次ぐ二番手なイメージですが、いや、これはブライダだからこそ、ジャコモ・ボリョーニャだからこそできたものであることも確認できる。三杯目にして、とてつもない旨味が沸き上がってきた。完成されている。これ以上のワインはないほど完成されている。
このまま一本を飲み干したいという欲求を抑えるのは、並大抵の努力では我慢できないが‥ここはグッとこらえるのだ。
二日目です。グラスはあえてオヴァチュアです。ブルゴーニュ型でもいと思います。ここは好み‥使い分けですね。チョークの香りに、軽くヒガシマル。徐々に初日感じたシェリーや、ヴィンサント的な香ばしくも、酸化したニュアンスを伴う甘味ある香りがあがってきます。二日目でも、まだまだ香りの勢いを感じますね。
口に含みますと、樽のヴァニラふわり‥。まさにヴィンサント的な樽香にも思えます。とても果実も密ですね。確かにドライフルーツ的な味わいも感じます。酸味の質量は十分。そうめんつゆ二倍的な旨味を余韻まで引っ張ってくれる酸味が素晴らしい。アルコールの馴染みも最高で、熟成した香りを持ちながらも、果実はまだ若さをも感じさせるほど豊富。味わいの中にヴィンサントを連想させる栗やナッツの風味も溶け込んでいます。
こんなワインは他にはない‥断言する。
確かに熟成香に、ヒガシマルな醤油香それをアルコール化したという意味で紹興酒的なニュアンスがあるが、これだけ果実味が健在で、甘味があれば、それが苦手という人も、これがあるからこその個性‥というものをご理解頂けるはず。二日目でこの状態を考えると、三日目は余裕。1989年のワインではあるが、抜栓後も、そう容易く落ちるとは思えない。こうなると1990年も飲んでみたい。過去に1996年や1997年を販売していますが、飲んでないのが悔やまれる。
三日目です。グラスは、一応オヴァチュア。このワインの場合は大きめでも良さそうですが、言うても89年の古酒ですからね。うおおおおおお!!若返っておるっ!!熟成香が大人しくなったが、果実香はハッキリ‥奇跡の若返り!!シェリーにドライフルーツを漬け込んだような香り、ヴィンサントをかけた奈良漬け‥もう、どうしようもないほど魅力的な香り。口に含みますと、まろやかになってるぅ〜スポンジケーキの風味、オーク、三日目でもまだまだ香りがしっかりと開いています。余韻が長いね‥うん、長い!!
四日目です。古酒で四日目まで引っ張る理由があるのです。グラスはオヴァチュア。最後の一杯‥という段階ですので、澱な濁りも混じります。二日目と変わらないかも。熟成香よりもミネラルか果実香。口に含むと、これまた二日目同様の美味しさ。1989年でこの持ち様‥まさに酒精強化ワインに近い存在かもしれません。
総論‥というわけではないが、このアイ・スマのように、遅摘みした葡萄または、陰干ししたような葡萄が使用され、(自ずと)アルコール度数の高いワインが熟成する先のスタイルが見えた。きっと、アマローネなどもこのような熟成に似ているのかもしれません。確かに熟成香はあるのですが、それをも特徴的。果実味も残り‥いや、健在でその甘味に加え、熟成香の甘味は、酸化香他の要素と交わり、シェリーやヴィンサントのようになるから不思議で魅力的。いい意味でイレギュラー。他のワインはこのような熟成はしない。特徴的だから美味しいと感じる‥というレベルも超越した姿に感動した。
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