Etna Rosso 2015 Graci
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エトナ・ロッソ 2015 グラーチ
《イタリア/シチリア/赤/ネレッロマスカレーゼ/フルボディ》
元々、実家はシチリアでブドウ栽培農家だったがそれを継がずにミラノの投資銀行で働いていたというアルベルト・グラーチ氏。しかし、エトナを訪れてワイン造りを夢見るようになったのだとか。2004年、祖父の他界を機に実家に戻ったアルベルトはシチリアでは一般的な(語弊あり)質よりも量を重視していた祖父の荘園を売り、エトナに畑を購入します。
エトナは特別な土地。火山性土壌で、豊富な日照がありながらその標高の高さから冷涼。そして、100年を越える樹齢の高いブドウが現存していること。
アルベルト・グラーチの好むワインはバルトロ・マスカレッロや、ジャコモ・コンテルノのバローロだとか。規律の中に厳格さがあり、妖婉さや純粋さがあって野蛮ではない。そんなワインを造りたい。彼が購入した醸造所は100年以上の歴史を持つ建物で、古い大樽や、木製のプレス機もまだ残っています。発酵槽は大き過ぎて使えないので小型のセメントタンクを導入しています。
ステンレスタンクは発酵時に温度が一気に上がるので、温度がゆっくりと上がるセメントタンクの方が酵母の能力を最大限に引き出せるという考え方。
畑は、エトナの北斜面、最も注目されているエリアのひとつである「パッソピッシャーロ地区」にある。2004年に購入した畑は標高660mの「アルクリア」と標高1200mを越えるフランク・コーネリッセンの隣の畑でもある「バルバベッキ」の2つ。以前の畑の所有者がケチだったお陰で一切農薬が使われていなかったとか。剪定は効率的ではなかったが、土壌は痛んでおらずとても良い畑のようです。
アルクリアは25haの敷地の内、ブドウ畑は15haでネレッロ・マスカレーゼが90%、ネレッロ・カプッチョとカタラット、カリカンテが他に植えられている。1200mを越えるバルバベッキに至ってはフィロキセラも到達していない区画で、そのほとんどの樹が自根。あまりにも標高が高いので他にはオリーブとリンゴしか育たないとか。湿気や病原体は少なく、ブドウにまつわる病気はほとんどない。それは農薬を使用する必要もなく、ボルドー液さえ使わずに栽培することが可能ということ。ただ、極度の乾燥による自然発生する山火事が問題になる。
標高1,200mともなるとブドウが完熟するのは11月になる。ゆっくりと熟したブドウは果皮の成分が豊かでタンニンに青さがない。樹齢が高いので収量は自ずと減る。1つのブドウ樹に3から4房しか収穫はできない。さらにブドウ樹は水分を吸い上げる力が弱いので、粒も小さくなる。
収穫したブドウは、果皮を漬け込んだマセラシオンを12日間行い、発酵はセメントタンクで区画毎、自然酵母のみで行う。発酵後もセメントタンクで熟成させるグラーチの基本のエトナ・ロッソ。
独断と偏見に満ち溢れた極主観的毒味
撫で肩のブルゴーニュ型瓶。シンプルなラベルデザインですね。コラボするGAJAは白地に上部に黒帯白抜きですが、こちらは白地に下部に黒帯白抜きです。ひょっとすると何か意味があるのかなと考えつつも、そもそもバルトロ・マスカレッロや、ジャコモ・コンテルノを崇拝して初めてようだが、となるとGAJAとのコラボはどうなんだろう?とふと思うが、まあ偉大な(先輩)生産者との実現はモロモロのことは気にしないでおこう。コルクはなかなかの質の4,5cm、グラスはヴィノムのブルゴーニュ型にする。ネレッロマスカレーゼらしい決して暗黒ではない透明度ある赤黒さがとてもいい色ですね。確かに火山性土壌を思わせるミネラル香が溶け込んだイチゴなどのベリー系果実香は甘味もともないとてもいい。熟度の高さと、果実味の深さを感じる果実香は「たっぷり感」がありますね。野生のフルーツ的なスパイスもキレイに濡れ、溶け込んでいます。
口に含みますと、おおらかに口の中を満たし、塩味を伴う甘味ある果実味がやっぱり「たっぷり」で満足度が高いですね。煮詰めた感じではないが、エキスと、14度のアルコールのボリュームもあります。余韻にかけても火山性土壌由来の、どこか焼けた(過熟を意味しない)風味(果実ではなくミネラル)が特徴的でエトナらしい。
めっちゃエトナ・ロッソですね。
やっぱり好きやわ。
少し張りのある輪郭、図太い果実味が主軸だけれども、しっとりとしたタンニン、行き届いた酸がありバランス、「体」もいい。
二日目もヴィノムのブルゴーニュ型です。火山性土壌のミネラル香と、甘味あるイチゴの香りとの関係は、塩とスイカにも似てる。イチゴが焼けた香りではない。火山性土壌の香りと果実香は別モノ。火山性土壌っぽさは、焼けた石のようで、火薬っぽさもある。赤い、または黒い火打石のような硝煙反応。対してイチゴはとてもピュアな果実香。それが混在するのがエトナのネレッロマスカレーゼの果実香。
旨味マシマシ、少しアセロラやフラボノイド系の果実香もある。とてもなめらかに詰まった密度がありフルボディ。終盤にかけて地味あるスパイス。心地よい、リズム感ある酸味もいい。しっかりとタンニンも感じるし、果実に甘味を感じるとはいえ、しっかりと辛口の赤ワインに仕上がっています。
うん、二日目はまろやかさも随分とでてきましたね。とてもおいしいです。
三日目もヴィノムのブルゴーニュ型。三日目は、海からの潮風がふわりと、そこに少しのヨード(昆布的な)香があります。イチゴを主体とした果実の香味にそんな昆布の旨味があり、この三日目は一番甘味も感じますね。火山性土壌由来の香味は溶け込み、いいまとまりがあります。少しビターな豆っぽさ、単一品種ですが複雑さもありますね。
これがグラーチのスタンダードなエトナ・ロッソかと思うと恐ろしい。やはりエトナは高額なクリュはもちろんその個性を感じるにはいいのですが、エトナ、ネレッロ・マスカレーゼを楽しむにはスタンダードクラスで十分ですし、造り手側ももっともそこを贅沢に造っているとも言えますね。
3,000円以下でこれだけの酒質となると‥エトナ好きはマストですよ!
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