Maestro Raro 2015 Felsina

トスカーナ州の赤 > Felsina

更新履歴 2019/04/30
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マエストロ・ラロ 2015 フェルシナ
《イタリア/トスカーナ/赤/カベルネソーヴニョン/フルボディ》

ドメニコ・ポッジャーリ氏がカステルヌォーヴォ・ベラルデンガのワイン荘園を購入したのは1966年のこと。友人であった故ルイジ・ヴェロネッリ氏の紹介で、フランコ・ベルナベイ氏をエノロゴに雇い入れ、1983年にリリースしたのがフォンタッローロと、キャンティ・クラッシコ・リゼルヴァ・ランチャ。このふたつのワインで一気にフェルシナの名声が高まることになります。ポッジアッリ家の所有となりますが、現当主は、娘婿であり1982年までは哲学博士として高校で教鞭をとっていたというジュゼッペ・マッツォコーリン氏。

フェルシナが位置するのはシエナの北、キャンティ・クラッシコ認定地域最南端のカステルヌォーヴォ・ベラルデンガ地区で、一部はキャンティ・コッリ・セネージ地域となり、境界を跨いで畑を所有しています。ランチャはキャンティ・クラッシコ地区内の単一畑、フォンタッローロはキャンティ・コッリ・セネージ地区のブドウも混醸されてますので、キャンティ・クラッシコを名乗ることはできないんですね。

カステルヌォーヴォ・ベラルデンガ地域は土壌は石灰を含む岩と薄板状のマール土壌が主体で、僅かに砂質とシストが混じり込みます。この複雑な土壌は感想しがちでブドウ樹は地中深くの粘土層まで根を生やさないと十分な水分を得られません。現在ではビオロジックを採用してブドウ栽培を行っていますが、ブドウのみならず様々種の植物をブドウ畑に隣接させることでミツバチや、動植物との共存を進めているそうです。

 「有機的な栽培だけでは十分とは言えない。サンジョヴェーゼはマッサル
  セレクションによって色々なクローンの最良の樹を増やしてきた。
  更に森や動植物との共存を進め、次世代に僕達の伝統を残していきたい。」

  また、同時に、

 「自然な栽培環境とワインの美味しさは関係ない。」

  とも言い切るところに共感を覚えます(まったくその通りだよ!)。

現在リリースしているキャンティ・クラッシコは四種類。CCベラルデンガ、CCRベラルデンガ、CCRランチャ、CCGSコローニア(高過ぎです)。サンジョヴェーゼ100%からなるIGTのフォンタッローロにカベルネソーヴニョンのマエストロ・ラロ、シャルドネのイ・シストリ、ヴィンサント。近年はスプマンテにも挑戦しています。


初ビンテージは1987年。ランチャに隣接するランチャ・ピッコラ畑と、ポッジオーロ畑で栽培されるカベルネソーヴニョン。80年代半ばに植樹されて以降、マッサルセレクションにより1990年から2000年にかけて順次植え替えられたようです。収穫されたブドウは除梗、圧搾を経て、28度から30度に温度管理されたステンレスタンクで16日から20日のアルコール発酵。発酵中は、パンチダウンや、毎日のポンプオーバーが施され、フランス産の新樽バリックで18ヶ月から20ヶ月の樽熟成。熟成後、アッサンブラージュされ瓶詰め。瓶熟成期間は8ヶ月から10ヶ月。

飲んでみました。

マエストロ・ラロも目立ったラベルデザインの変更を感じませんね。もちろん、細部に変更はありますけれども。目立って違うを感じるとしれば、紙質が良くなっていると思います。ラベル地はなんて表現すればいいかな。コルク柄にも見えますがコルクじゃないんだろうな。汚れに見えるかもしれませんが、こういう模様、デザインです。キャップシールはボルドー色。

バックラベルに記載のアルコール度数は13,5度。コルクはフェルシナらしいなかなかの質の5cm。グラスは‥ヴィノムのボルドー型を引っ張り出すのは久々ですね。過去に何度か書いてますが、ヴィノムのブルネッロ型とボウルの形は同じ、グラス口、先端が約1cmほど高く、先細りで直径は‥測ったことはありませんが、ブルネッロ型よりも小さめ(それほどかわんないけど…)、その微妙な差は、口に当たる「弧」の形状面積、舌のどこに当たるかが変わるのである。

色はそりゃあ真っ黒だ。まろやかかつ重厚な果実味と同調するような樽香はカベルネに似合う。でも、まったくカベルネのいい意味でも、悪い意味でも(あたしは悪いとは思わないけど‥要は程度ですからね)青さは感じない。青さを未熟とすれば、ではそれを感じないこれは完熟か?きっと完熟だろう。でも、完熟=ジャミーなワインを想像するのは間違いだ。完熟は未熟さがない‥であって、ジャミーだったり、濃厚(過ぎる)かどうかは関係ない。たぶん、知らんけど‥。

香りには、カベルネソーヴィニョンらしいベリー系の果実香はもちろんだけれども、まるでフォンタッローロのような、フェルシナのような個性があり、酸味も思わせる香りがあり、ああ、これはボルドーちっくでも、新世界ちっくでもないのがわかる。これは、トスカーナの、フェルシナのカベルネなんだと実感できるだろう。

口に含むと、鉛感のある重さと、柔軟ながら、硬さを感じる密度感、口の中を満たすボディがあるが、2015年なのに、すでに、すでに、飲めるまろやかさがあり、完成度が高い。もう出来上がってる。でも、そのもう出来上がってるは熟成ポテンシャルの否定ではない。いやああ、なんだかんだと「やわら硬い」という表現がピッタリかもしれない。なにも閉じてませんよ‥という顔をして、実は全開でないのもお見通しだ。

カベルネ単一なんて久々だが、そこはやはりイタリアワインとしてのカベルネ100%。とってつけたような樽香の化身ではない。これなら、サンジョヴェーゼ同等の使い方で肉が喰える、肉が喰える(大事なことなので二回書きました)。そう、樽香にロースト、香ばしさを強く感じるわけではないが、まろやかに溶け込んだタンニンは、必ず、肉の脂身にも合うはずだ。ほどよく赤身と、脂の少し噛んだ部位‥だからティー、ティ、ティー、ティーティーティー‥ボーンって偉大だな。

樽の風味はフォンタッローロ同様、タンニンと酸味の関係にカベルネらしさがあるが、このワインはまさしくフェルシナ。フルール爆弾でもないし、思った以上に甘味も控えめで、バランスはタイト。

二日目。カベルネソーヴィニョンらしさはもちろんあるが、その構成や、渋味と酸味との兼ね合いを思うと、なにも、ヴィノムのボルドー型でなくてもいいのかもしれないと思った次第‥で、ヴィノムのブルネッロ型。カベルネらしいベリー系の果実香は、フレンチオークを杉っぽく感じさせる。初日よりも明らかに艶っぽくまとまった果実香は蜜で、リッチな香り。果実香にも、初日よりも甘味を、樽香にもややヴァニラを強く感じる。これこそトスカーナIGTとしてのカベルネらしい。ただ、飲めば、フラッシュバックするかのように、トスカーナを、フェルシナを感じさせる構成感と酸味があるから面白い。からといってそれが表裏一体なのか、二面性なのか‥意表をつくわけでもないし、すんなりと腑に落ちる。旨味があり、フルボディだけれども、やっぱりキモは酸味かな。マエストロ・ラロも超久々に飲んだし、若いビンテージを思うと記憶にもないが、とてもおいしい。そして、これまで飲んできた2015年同様にバランスがいい。十分な複雑さと余韻もあり非の打ち所もない。カベルネ単一こそ久々だけれども、サンジョヴェスタなあたしにも、いとも容易くおいしさが伝わる。

三日目。グラスはヴィノムのボルドー型に戻す。香りはほんっと、スーパータスカンとしてのカベルネソーヴニョンらしい。でも、新樽バリックと同等に、熟した、でもジャミーではない健全なカベルネの果実があるのがステキ。飲み口はようやくやわらかい。いや、初日から硬い‥と感じるほどではなかったんだけれども、全体的なまとまり、馴染みは三日目にしてようやくは、まだビンテージ的に若いからかもしれない。でも、初日から飲めてるのは2015年ならではの完璧なバランス。甘味のある旨味‥カベルネソーヴィニョンの香味を持つが、やっぱりフェルシナらしい。フェルシナのサンジョヴェーゼばかりを飲んでるとそれに気づいてなかったのだ。なるほど。

四日目、グラスはヴィノムのボルドー型で。三日目とそう変わりはない。ただ、さらにまとまりは感じる。もちろん、まだ若く、そしてすばらしいビンテージだから尚更でもある。渋味と酸味のバランスもさらに良くなった。カベルネソーヴニョン100%だからって、フランスに浮気をしたという背徳感がないのは、飲めばわかる。これは完全にイタリアのカベルネソーヴニョンだから。2015年らしいねー。いい意味で何も引っかからない。つまり完成度が高い。すばらしいバランス。

五日目、グラスはヴィノムのボルドー型で。五日目まで引っ張るのは久々ですね。もちろん、力強さがあり若さもある。そこに荒さも感じるけれども、閉じ感はまったくないですね。抜栓後のバイオリズムがあって、何日目‥厳密に言うと何時間後の何杯目がいい感じに当たるかどうかは古代君のようにトリガー持ったまま狙えるわけではないけれども、総じておいしいのがいいワイン。うーん、グラスの中でぐーんとおいしくなるねえ。

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