Passopisciaro 2007 Passopisciaro
シチリア州の赤 > Passopisciaro (Trinoro)
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パッソピッシャーロ 2007 パッソピッシャーロ
《イタリア/赤/ネレッロ・マスカレーゼ/フルボディ》
パッソピッシャーロもいくつかの世代に勝手に分けております。2003年までの創世記は色や樽の風味の濃く、現在とはかけ離れたスタイルでした。2004年から徐々に‥ではなく途端に色は薄く、チャーミングな果実の香味を持つスタイルに変化します。その過程を目の当たりにしてから、現在のエレガントなスタイルを受け入れるにはそれなりに時間も必要としました。そして2008年からはクリュ別のコントラーダシリーズが生まれます。コントラーダシリーズも「キアッペマチーネ」「ポルカリア」「ランパンテ」「スキアラヌォーヴァ」の四種類から「グラルディオーラ」が増え五種類となりました。そして、変わらずいくつかのクリュからのブドウを混醸しているのがこの「パッソピッシャーロ」となります。
この混醸となる「パッソピッシャーロ」はとてもコストパフォーマンスが良いです。そして軸なのです。高額なワインになればなるほどコスパが悪くなるのは当然で、その個性がまだ伝わらない(感じられない)現状、為替他モロモロの影響を考慮しても2012年のコントラーダシリーズの価格はあまりにも高くて、なかなか手が出せません。
高いワインが売れる理由や買う理由を思うとまだまだ産地、品種、生産者の素晴らしさをご理解頂けていないはず。だって私がまだ‥だからこそ手が出ないわけですから。いや、美味しいのはわかってる。でも、そこに個性の差が必要であるか?クリュの個性は並列的なものではないのか?こんなコントラーダシリースの値上げを思うと実は2012年の「パッソピッシャーロ(混醸)」は輸入元さんの配慮で値下げがありました。
クリュだから高いのはおかしい。
これまでも言い続けています。ワイン誌の評価だけを頼りにするわけではありませんが、実際に混醸モノの方がクリュよりも高い評価を得ていることもありますし、前述の通り、クリュは高くてコスパが悪いと(現時点では)感じます。要はお値段さえ下げてくれれば自ずとコスパは上がるのに。いや、お値段そのままでも、その品質の値打ちが実感できれば‥ということでもあります。
現時点では混醸モノを選択する方が‥というのは西野嘉高の思想。なお、2012年の混醸のパッソピッシャーロはご紹介までにもう少し時間を頂きます。実は、すでに2本ほど飲んでいますが、まだ若いんです。
そんな所に、2007年の混醸パッソピッシャーロの蔵出し古酒のオファーが舞い込んできました。しかも、現行ビンテージと同じ価格で販売できるオファーが。実は2007年は、日本市場のみならず、蔵出しで出荷があったようで並行モノ市場からもオファーがありました。しかし、その価格は今回ご紹介するモノよりも+1,500円ほどになりましたので華麗にスルーしてたところなんです。
2007年。そう2008年からコントラーダシリーズがクリュ別にリリースされます。それまでも醸造はクリュ、区画別に細分化されていたわけですが、すべて混醸のパッソピッシャーロとして詰めていた最後のビンテージになるんですね。
当時合計10haの畑には、haあたり8,000本でネレッロマスカレーゼが植樹されています。区画により標高は650m、820m、900m、1000m以上と様々ですが、樹齢が60年〜80年。ブドウ栽培に化学肥料は使われませんが、散布剤として、銅・サルファ粉・ライム・粘土粉・プロポリ・グレープフルーツシードの抽出液などが撒かれています。
例年は10月の下旬頃からの収穫ですが、2007年は夏の終わりに、湿気のある気候に変化‥その湿気によって、ブドウの樹の夏の暑さにより水分不足気味な状態が解消され、ゆっくりとした熟度となり、結果、遅詰みの完熟。11月上旬から中旬頃の収穫となりました。
収穫は、火山の脇の畑で、標高500mの低い地点から始まり、最後は標高1000m地点のグアルディオーラ畑となりました。収穫されたブドウは温度管理された50hlのステンレスタンクで(一部30hl)15日間の醸しとアルコール発酵。50hl(一部30hl)のフランス産のオーク樽でのマロラクティック発酵が施され、18ヶ月の樽熟成を経て2009年の3月に瓶詰め。生産本数は約47,000本。
フランケッティ曰く「ワインはやわらかく、若く、まだ微弱だ、それはつまり、秘められた力を持っているということ。時間はかかるが、その力が徐々に花開いていくだろう。」と当時コメントしています。
なるほど。そう思って生産本数のいくらかを熟成させていたのでしょうね。それを今年になってからリリースし始めたということはようやく飲むに良いタイミングとなったということでしょうか。
独断と偏見に満ち溢れた極主観的毒味
手元の2012年とラベルデザインを比較すると細かな変更点がないわけではありませんが、パッと見はお馴染みのパッソピッシャーロ。瓶型も同じようです。2007年の毒味を読み返すとスタイル変更のあった2004年と似たとても薄い色調と記載していますが2012年と色味はまったく変わりませんね。2007年はほんの少しだけ瓶底に澱が出ているのが確認できます。アルコール度数が2007年は2011年同様の14度表記ですが、2012年は15.5度表記。2012年はアベレージを超えていると思いますが、それはまたご案内するときに説明します。ということで2007年は14度とパッソピッシャーロにとってアベレージのアルコール度数かと思います。
コルクは良質の5cm。リリース時と変わらぬであろうほぼ尻のみの染まり。側面がきちんとボトルネック内壁に密着してた証拠かと思います。グラスはヴィノムのボルドー型です。輪郭に少しオレンジが入りますね。ザラメ、少しヴィンサントにもにた甘味ある香りは、熟成を感じさせます。イチゴ、小さな赤いチェリーの砂糖漬け。少し鉄分ある紹興酒的な熟成香が出ています。
口に含みますと、艶やかでグロスを塗ったような輪郭、香り同様のシュガーな甘味。重さを感じさせるわけではないが、赤い果実のコンポートな果実味に、酸味も渋味も角がとれ、またーりと丸くなった旨味がポンと。とても余韻が長いですね。
リリース時はもっと旨酸っぱく感じたでしょうし、もっと軽やかだったと思いますが、とてもまろやかに果実味が凝縮して感じられます。いい甘味が出てますね。スパイスを伴う甘味。あっさりとしたイチゴジャムにシナモンを加えたような。アルコール感も少なからずある。それは甘味にリンクしている。
二杯目。熟成というのは枯れの要素ばかりではない。確かに酸化のニュアンスはあるが、これだけ果実味に時間経過がゆえの凝縮や、甘味を感じるのも面白い。
一旦、中心部‥核への集約があってからの外側へのベクトル。今、飲み頃なんですよね。老ね過ぎるわけではない、でも熟成を感じる、角取れも感じる。香味に閉じはなくむしろ開放的に開いて感じる。甘味があって、旨味があって‥。
二日目もヴィノムのボルドー型。ブドウからできた紫のハチミツのような甘味ある香りが増幅し、熟成香はやや控えめで梅酒っぽさがある。どこかオリエンタルなスパイスはシナモン以外に、何かネパール料理屋で嗅いだような‥。
飲み口はとてもエレガント。旨味もほどほどで、甘味もほどほどにまとまりました。うん、旨いですね。初日に少し酸化、熟成香が前でしたので、このまま‥かと思いましたが、この二日目の薄旨い(薄くない)、薄甘い(薄くない)感じがとてもいいですね。とてもスムースで、障る、当たる部分がありません。にしても、熟成することでこんなにも甘味が増幅されるのか。
三日目もヴィノムのボルドー型。グラスから放たれる熟成香は甘い果実味の海に溶け込む。この甘味の出方が、フランケッティらしいのだな。少し漢方や、オリエンタルな果実、チェザネーゼ・ダフィーレでも入ってるのでは?という容疑(笑)。この三日間だけでも色んな要素に変化を感じますね。
食中酒とするならば相棒は何がいいのか?のアイデアは思い浮かばない。この深く、コクのある甘味はワイン単体で楽しむ方がいいかな。レーズンなどのドライフルーツとの相性は良さそうだし、そうだ、ダンスロット・ラムを添えるなんていいのではないか?甘味の濃さと、少しの熟成したニュアンスがラム酒にも通じる部分があるように思う。
個人的には抜栓したてよりも熟成香が落ち着いた二日目以降の方が好み。グラスも終始ヴィノムのボルドー型にしたが、ブルゴーニュ型でもいいと思います。ネレッロ・マスカレーゼが熟成する過程のひとつの表情。熟成にはバイオリズムもあるから、これからどのようになっていくのかはわからない。あと5年後、どうなっているのか楽しみですね。
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